労働災害と損害賠償(政府保障以外に受けられる補償)
労働者は労災保険給付だけでは不足する部分を、事業主に対して損害賠償請求を行うことが出来ます。
損害賠償請求の際、労働者は「業務と災害の因果関係・契約上の義務違反の事実」を立証する必要があります。
一方、事業主は「事業主には責任がないこと」を立証しなければいけません。
安全配慮義務違反による損害賠償は、立証責任の観点で、事業主の方の負担が大きくなります。
安全配慮義務違反ではなく、不法行為を根拠とする損害賠償請求もあります。
その際、労働者は被害者として事業主に故意・過失があったことを立証する必要があります。
安全配慮義務違反による損害賠償
労働者は、作業における危険を回避するための作業管理や労働環境設備の整備を怠った事業主に対して、安全配慮義務違反として損害賠償を行うことが出来ます。
不法行為による損害賠償
一般的な不法行為に基づく損害賠償責任は、故意または過失によって他人の権利を侵害した者が、生じた損害を賠償する責任を負います。
不法行為責任が成立するための要件は、以下の4点です。
1)故意または過失が存在すること
2)他人の権利を侵害したこと
3)損害が発生したこと
4)行為と損害との間に因果関係が存在すること
事業主に対し不法行為に基づく損害賠償責任を請求する要因としては、使用者責任(民法715条)を根拠とすることが多いです。
使用者責任とは、事業主は、従業員が業務の執行において第三者に加えた損害を賠償する責任があることを言います。
使用者責任のが成立するためには3つの要件があります。
1)使用・被用の関係が存在すること
2)その被用者の行為が民法709条の不法行為の要件を満たしていること
3)その損害が事業の執行につき加えられたものであること
出所:冨田武夫、牛嶋勉(2015)「最新実務労働災害ー労働補償と民事損害賠償ー」三協法規出版社